本日報道されました件に関しまして、
令和7年3月17日に株式会社光文社より質問状が届きましたため、クラブとは利害関係のない特別調査委員会を設置いたしました。
特別調査委員会より調査報告書が届きましたため、ご報告させていただきます。
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FC町田ゼルビア 御中
調 査 報 告 書
【公表版】
2025年4月6日
特別調査委員会
委員長 山岡 通浩
委 員 鈴木 優吾
委 員 沖田 洋文
第1 特別調査委員会設置の経緯
令和7年3月17日、株式会社光文社FLASH編集部は、公益財団法人日本サッカー協会(以下「JFA」という。)の加盟チームであるFC町田ゼルビア(運営:株式会社ゼルビア。所在:東京都町田市三輪緑山1-1FC町田ゼルビアクラブハウス。以下「当クラブ」という。)に対し、当クラブに所属する黒田剛監督(以下「黒田監督」という。)のパワー・ハラスメント等に関する問題について、質問状を送付した(以下「本質問状」という)。
令和7年3月21日、当クラブは、本質問状記載の質問内容に関する事実関係の究明、把握、調査、認定及び評価を行うことを目的として、弁護士山岡通浩に対し調査を依頼した。
弁護士山岡通浩は、即日、自らを委員長とし、ほか2名の弁護士を委員とする特別調査委員会(以下「本委員会」という。)を設置し、同月25日から調査を開始した。
第2 本委員会の構成等
1 本委員会の構成は以下のとおりである。上記各委員は、いずれも当クラブ及び本質問状で問題とされた個人ないし団体と利害関係を有していない。
委員長 弁護士 山岡 通浩 (山岡総合法律事務所所属)
委 員 弁護士 鈴木 優吾 (同上)
委 員 弁護士 沖田 洋文 (同上)
2 本委員会は、日本弁護士連合会が定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の趣旨に則りつつ、当クラブがサッカーチームであるという特質にも配慮しながら、当クラブ、当クラブを運営する株式会社ゼルビア及び関連会社(以下これらをまとめて「当クラブ等」という。)から独立した立場で、中立・公正で客観的な調査を実施した。
(1) 本委員会の委任契約書には、下記内容が明記されている。
記
甲は、乙に対し、本件委任事項を委任するに当たり、下記事項を確認の上、遵守することを約束する。
1 独立性の制度的保障
(1) 調査報告書の起案権は特別調査委員会のみに属すること、したがって、特別調査委員会が調査報告書を正式に甲に提出する前に、その内容を甲に開示し、修正の要望を受けることがあっても、修正に応じるか否かは専ら特別調査委員会の判断によること。
(2) 調査対象事項、調査対象とする役職員の範囲、及び、調査手法については、特別調査委員会に一任すること。また、調査に要する費用(実費)は甲が負担することとし、特別調査委員会の要請があり次第直ちに支払うこと。
2 調査協力体制
(1) 特別調査委員会の調査に全面的に協力すること。
(2) 甲の代表者から、甲の役職員に対して、事情聴取、関係資料の提出など、調査に対する協力を最優先するよう業務命令を出し、これを次項の内容とともに甲の役職員に周知、徹底すること。
3 調査協力者の保護
(1) 役職員が特別調査委員会の調査に協力して甲又は甲の代表者に不利な陳述をしたこと、または不利な関係資料を提出したことを理由として、当該役職員に対して不利益な取扱いをしないこと。
(2) 調査委員会が収集した関係資料(特に役職員と調査委員会とのメールでのやりとり)については、調査委員会が甲に提出する義務がなく、甲は調査委員会に提出を求めることができないこと。
4 甲の守秘義務
甲は、乙から提出を受ける資料(但し、調査報告書を除く)を第三者に対して開示しないこと。
以上
(2) 本委員会は、調査方法の決定、調査・分析の実施、報告書の作成の全過程において、当クラブ等の意向に左右されることなく、また、一切の影響を受けることなく、本委員会の責任と判断においてこれらを遂行した。当クラブ等も、本委員会の調査には全面的に協力してきたものであり、本委員会が実施した調査において妨害はなかった。
第3 調査対象とした事実の範囲(調査スコープ)
本委員会が当クラブと協議した上で決定した調査スコープは、本質問状に記載された事実の有無、及び、事実が認められる場合のパワー・ハラスメント該当性である。
本質問状の内容は、以下のとおりである。
(1) 2024年に、貴クラブは一年で13人もの選手を放出しました。なかには、長年チームを支えた中心選手もいましたが、黒田監督はこうしたベテラン選手をチーム内で「あいつは造反者だ」などと呼び、「チームの雰囲気を悪くする存在だ」と、たびたび公言していたと伺っております(当委員会注:以下「質問事項1①」という。)。特に、2023年に貴クラブから放出されたA氏に関しては、現役引退後にスタッフとして貴クラブに復帰しましたが、黒田監督の「選手に悪影響を及ぼす可能性があるから選手と接触させるな」との考えで、選手の練習が終わった午後以降の出社を命じられるなど、冷遇を強いられていると伺っております。こうした発言やA氏に対する処遇は、事実でしょうか(当委員会注:以下「質問事項1②」という。)。
(2) 2024年6月ごろ、当時貴クラブのコーチだったB氏に対し、練習中に黒田監督が「俺の言うことが聞けないなら、お前なんてもういらない」などと、B氏を選手らの前で怒鳴りつけたと伺っております。その後、黒田監督の指示で、B氏は試合中ベンチに入れず、遠征先でも前泊させないなどの処遇にしたと伺っておりますが、こうしたことは事実でしょうか(当委員会注:以下「質問事項2」という。)。
(3) 2024年12月、ミーティングの際にCマネージャーに対し、「なぜこんなに日程ができてないんだ」などと高圧的に怒鳴りつけ、1時間ほど沈黙が続いたことがあったと伺っております。こうした黒田監督からの日常的な圧により、C氏は適応障害に陥り、現在休職していると伺っていますが、これは事実でしょうか(当委員会注:以下「質問事項3」という。)。
(4) 2024年沖縄キャンプで、黒田監督がインフルエンザに罹ったことがあったと伺っておりますが、黒田監督が一般的な隔離期間・チームの規約に反し、スタッフらとともに会食に出かけたことがあったと伺っております。これは事実でしょうか(当委員会注:以下「質問事項4」という。)。
第4 調査期間及び調査方法
1 調査期間
本報告書作成のための調査期間は、令和7年3月25日から同年4月4日である。
2 調査方法
本報告書作成のために本委員会が実施した調査の概要は、以下のとおりである。
(1) 黒田監督に対するヒアリング
(2) 当クラブスタッフに対するヒアリング
ヒアリング対象者の詳細は、次のとおりである。
氏名 |
所属 |
役職 |
原 靖 |
強化部 |
フットボールダイレクター |
D |
強化部 |
|
E |
強化部 |
|
A |
強化部 |
ホームタウン担当 |
F |
トップチーム |
コーチ |
G |
トップチーム |
コーチ |
H |
トップチーム |
コーチ |
I |
トップチーム |
コーチ |
J |
トップチーム |
コーチ |
B |
元トップチーム |
元GKコーチ |
K |
トップチーム |
トレーナー |
L |
トップチーム |
トレーナー |
M |
トップチーム |
マネージャー |
N |
トップチーム |
マネージャー |
O |
トップチーム |
|
P |
トップチーム |
チーフドクター(内科) |
Q |
広報部 |
|
なお、本委員会は、質問事項3の事実関係を慎重に確認するため、上田武蔵COOを通じて休職中のCマネージャーに対し、ヒアリングの打診を行ったものの、同人から体調不良を理由にヒアリングを受けることの延期の申し出があったため、同人に対するヒアリングを実施することはできなかった。
3 本委員会による調査の限界に関する留保
(1) 本委員会は、「第3 調査対象とした事実の範囲(調査スコープ)」を確認するため、本報告書記載の調査を実施した。しかし、本委員会は、強制的な調査権限を持つ団体ではないことなどを理由とする、調査の限界が存在する。
⑵ また、本委員会における事実認定は、本委員会が独自に収集した資料及び本委員会によるヒアリングで得られた供述について、その信用性を慎重に判断した上で行ったものである。そのため、本委員会が判断の基礎とした資料等以外の資料や供述が存在し、又は本委員会が判断の基礎とした資料や供述に事実と異なる内容が含まれていることが発覚した場合には、事実認定が変更されうることを留保しておく。
第5 パワー・ハラスメントの認定基準
本委員会は、以下の基準により、パワー・ハラスメントに該当するか否かを判断した。
1 労働施策総合推進法
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。最終改正令和2年法律第4号)(いわゆるパワハラ防止法)第30条の2第1項は「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」と定めている。
2 厚労省の指針
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年1月15日厚告5号)が、労働施策総合推進法の規定を受けて、職場におけるパワー・ハラスメントの内容を詳細に定めている。
以下、本件に関係のある部分を引用する(特に関係のある部分には下線を付す)。
(1) 職場におけるパワー・ハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワー・ハラスメントには該当しない。
(2) 「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいう。
(3) 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが適当である。また、その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要である。
(4) 「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。
この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。
(5) 職場におけるパワー・ハラスメントは、⑴の①から③までの要素を全て満たすものをいい(客観的に、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワー・ハラスメントに該当しない)、個別の事案についてその該当性を判断するに当たっては、⑶で総合的に考慮することとした事項のほか、当該言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要である。
職場におけるパワー・ハラスメントの状況は多様であるが、代表的な言動の類型としては、以下のものがあり、当該言動の類型ごとに、典型的に職場におけるパワー・ハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある。
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ) 該当すると考えられる例
① 殴打、足蹴りを行うこと。
② 相手に物を投げつけること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 誤ってぶつかること。
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ) 該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意すること。
② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。
3 JFAの指針
当クラブが加盟するJFAは、そのホームページにおいて、厚労省の指針を受けて、スポーツにおけるハラスメント等の行為の種類と事案例を以下のとおり公表している(特に関係のある部分には下線を付す)。
(1) 身体的な攻撃(暴力)
・殴る、蹴る、物を投げつける・けりつける、押し倒す、髪の毛を引っ張る
・過度な罰走、罰として腕立て伏せ(練習の名を借りた暴力)
・暑熱下の状況で水を飲ませない
・根拠のない高負荷な練習を課して選手を負傷させる
(2) 精神的な攻撃(人格を否定するような言動)
・あなたは価値がない、能力がないと言う
・脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言・差別的言動
・人前で、威圧的な態度で大声で執拗に叱責する、無条件で従わせる
(3) 人間関係からの切り離し
・特定の選手を練習や試合から嫌がらせのために外して隔離する
・特定の選手を指導者やチームメイトが集団で無視をして仲間外れにす
る
(4) 過大な要求
・競技上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する
・無理な練習目標を設定し、それができなかったことを厳しく叱責する
・負傷にしているもかかわらず練習を休ませない、試合出場を強いる
(5) 過小な要求
・競技上の合理性なく、選手の能力や経験とかけ離れた程度の低い練習を命じる
・気に入らない選手に練習をさせない
(6) 個の侵害
・私的なことに過度に立ち入る
・SNS等を使用して選手への誹謗中傷や、選手に関する嘘(不確かな)情報を流布する
・本人の承諾なく個人情報を暴露する、写真を拡散する
第6 当クラブの組織概要等(前提事実)
1 当クラブの概要
昭和52年、町田サッカー協会に所属する小学生たちを選抜して結成したFC町田トレーニングセンターが設立され、その後、平成元年に、年齢制限のない社会人がプレーするFC町田トップチームが誕生し、当クラブが創立された。
平成20年には、当クラブの運営主体として株式会社ゼルビアが設立され、平成23年には、Jリーグ入会が正式に承認された。また、平成30年には株式会社サイバーエージェントのグループに加入した。なお、令和5年には、史上初となるJ2優勝及びJ1昇格を達成し、令和6年のシーズンではJ1で3位となった。
当クラブの主な事業は、プロサッカー試合の開催・運営、サッカースクール及びサッカー普及活動の企画・運営、オリジナルグッズの制作・販売など地域総合スポーツクラブとして、様々なスポーツの機会を提供することである。
2 組織体制
当クラブは、これを運営する株式会社ゼルビアの代表取締役社長兼CEOである藤田晋氏をトップとし、その下に強化部と事業部が存在する。
(1) 強化部
強化部は、原靖氏(フットボールダイレクター。以下「原FD」という。)をトップとし、そこに、黒田監督、コーチ、トレーナー、マネージャー、選手などのトップチームが所属している。
強化部は、後述する事業部とは別系統の組織であり、選手の編成やスカウト、チームの管理、査定、契約などを担当している。
(2) 事業部
事業部は、株式会社ゼルビアの代表取締役COO上田武蔵氏をトップとし、そこに、マーケティング部、運営部、広報部、パートナー事業部、地域振興部、渉外部、経営管理部、国際部、普及部が所属する。
3 黒田監督について
黒田監督は、昭和45年5月26日生まれであり、平成6年に青森山田高校のサッカー部コーチ、平成7年から令和4年まで同校のサッカー部監督を経て、令和5年2月1日から現在まで、当クラブの監督を務めている。
第7 当委員会の調査結果
当委員会が本質問状記載の事実について調査した結果は、以下のとおりである。
1 質問事項1①について
(1) 当委員会が認定した事実
黒田監督がベテラン選手をチーム内で「あいつは造反者だ」などと呼び、「チームの雰囲気を悪くする存在だ」と、たびたび公言していた事実は認められない。
なお、その後、2025年4月6日付けでSmartFLASHの「【独自】町田ゼルビア・黒田剛監督 選手&スタッフが告発する『激詰めパワハラ』疑惑をJリーグが調査中」との記事が配信され、その中で、「俺が藤田社長に直接報告したら、お前なんかただじゃすまないぞ」というのが黒田監督の口癖であると報道されているが、そのような事実は認められない。
(2) 事実認定の補足説明
黒田監督がベテラン選手をチーム内で「あいつは造反者だ」などと呼び、「チームの雰囲気を悪くする存在だ」と、たびたび公言していたという事実については、黒田監督自身が、「造反者という言葉は知らず、一度も使用したことがない」と言って否定しているほか、原FD、A氏、F氏、J氏、K氏、M氏、L氏、N氏、O氏から事情を聴いたが、そのような発言を聞いた者はいなかった。
黒田監督が「俺が社長に直接言ったら〇〇はすぐに××になるぞ」と口癖のように言っていたという事実についても、黒田監督自身が否定しているほか、ヒアリング対象者にもそのような発言を聞いた者はいなかった。
2 質問事項1②について
(1) 当委員会が認定した事実
現役引退後にスタッフとして当クラブに復帰したA氏が午後以降の出社となったのは、A氏が夕方から小学生らに対するサッカーの指導業務に従事することになったことから、午前中からクラブハウスに出社して業務を開始すると、業務時間が長くなりすぎるため、A氏に配慮して、原FDがA氏との話し合いにより決めたことであって、黒田監督の「選手に悪影響を及ぼす可能性があるから選手と接触させるな」との考えで、A氏が冷遇を強いられたものではない。
(2) 事実認定の補足説明
原FD、黒田監督、A氏のヒアリング結果によれば、以下の事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
A氏は、令和5年7月まで約17年間に亘り選手として当クラブに所属した後、「いわてグルージャ盛岡」に移籍して現役を続行したが、令和7年1月31日に同チームを辞め、現役を引退した。
原FDは、A氏が当クラブにおいて17年間も選手として在籍し、当クラブに多大な貢献をしてきたことから、A氏が現役を引退する前に盛岡に赴き、A氏に引退後のセカンドキャリアはどうするのか、当クラブにスタッフとして戻る意向があるか否かを確認したところ、A氏は是非戻りたいとのことであった。
そこで、原FDは、事業部の各部長にA氏を受け入れるポジションがあるかどうかを確認したところ、サッカー選手以外に社会人経験のないA氏を受け入れる部署はなく、強化部で受け入れざるを得ないこととなったが、当時、一般的なサッカークラブの強化部員が2、3人程度であったのに対し、当クラブにおける強化部員は既に5、6人おり、十分な人材が配置されていたため、A氏が新たに担当する業務はなかった。特に、選手の査定、選手契約の管理、選手のマネージメントという業務については、各選手の契約情報(査定の内容や年俸、契約内容等)に接する必要があるが、約1年7か月前まで同じ当クラブの選手として同僚であったA氏は不適任と考えられ、また、A氏本人も元同僚の契約情報に接することについては消極的であった。
そこで、原FDは、関係者と協議の上、強化部に新たに「ホームタウン担当」との役職を設け、A氏に担当させることにした。同役職は、小野路町や南町田に所在する当クラブの拠点を1日ごとに回り、小学生らに対してサッカーの指導を業務とするものである。背景事情として、当時、当クラブは、町田市に居住する小学生らが、近隣のFC東京や川崎フロンターレ等近隣のクラブチームに流出してしまうため、地域の子どもが当クラブに定着しないという問題を抱えていた。その意味で、当クラブにとって、地域の小学生らを対象とするサッカー指導を充実させることは急務であった。当クラブは、A氏が選手を引退してから日が浅く、小学生らに対してサッカー指導をするのに申し分ない運動能力及び身体状況を有していると判断したことから、A氏に当該業務を任せることにしたが、A氏も異を唱えるどころか、むしろ特別に無理を言って戻してもらい感謝しており、「身体が動くうちに子どもたちの指導ができる。」と喜んで受け入れた。
そして、原FDは、小学生を対象とするサッカーの指導等が小学校の放課後(概ね午後4時頃から9時頃まで)に行われることから、午前中からクラブハウスに出勤して業務を開始すると、業務時間が長くなりすぎるため、A氏と話し合い、A氏の出勤時間を午後とすることにした。
A氏は、令和7年2月1日に当クラブのスタッフとして復帰し、強化部のホームタウン担当に就任し、それ以降、午後クラブハウスに出勤し、将来事務作業に従事するための訓練として、パソコンの操作を学習した上で、夕方には、小野路町や南町田などのサッカースクールの拠点に赴き、小学生の指導を行っているが、そのほかにも任意で午前中にクラブハウスに訪れ、自らパソコンの学習をしており、その間、特に選手との接触を禁じられているようなことはない。
3 質問事項2について
(1) 当委員会が認定した事実
黒田監督が、令和6年6月頃、当時当クラブのコーチであったB氏(以下「Bコーチ」という。)に対し、練習中に選手らの前で「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」という趣旨の発言を強い口調でした事実は認められるが、「俺の言うことがきけないなら、お前なんてもういらない。」と怒鳴りつけた事実は認められない。黒田監督の上記発言はパワー・ハラスメントには該当しない。
また、黒田監督の指示で、Bコーチは試合中ベンチに入れず、遠征先でも前泊させないなどの処遇にした事実は認められるが、それは8月31日の浦和レッズ戦で失点したことが原因であり、9月以降のことである。黒田監督の上記指示は、パワー・ハラスメントには該当しない
⑵ 事実認定の補足説明
黒田監督、原FD、Bコーチ、H氏(以下「Hコーチ」という。)、K氏のヒアリング結果によれば、以下の事実を認めることができる。
Bコーチは、令和6年6月当時、当クラブのゴールキーパーコーチ(ゴールキーパーやセットプレー等の守備を担当するコーチのこと。以下「GKコーチ」という。)であったが、セットプレーの練習中に、選手に対し、黒田監督の指導内容に反するような指導をしたため、黒田監督が、Bコーチに対し、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」等と強い口調で言った。これに対し、Bコーチは、自分が黒田監督の指導どおり選手を指導したつもりであったため、「僕も同じようなことを言ったんですが。」と弁解したが、黒田監督は収まらず、5分程度同じ趣旨の発言を強い口調で繰り返した(なお、ヒアリング対象者の中に、一人だけ、大声できついことを言っていたので、「怒鳴った」といってもよいと思うと供述した者がいたが、他の複数の供述に比べ特に信用すべきであるという事情が認められなかったため、採用しなかった)。
練習が終了した後、Bコーチは、謝罪の言葉を述べながら、スタッフルームに戻る黒田監督に付いて行き、さらに、スタッフルームで、黒田監督に対し、「監督の意図と違うことを言ったつもりはないんですが、すみませんでした。」等と繰り返し謝罪した。このとき、Bコーチは、黒田監督が椅子に座っており、自分が直立していると黒田監督を見下ろすことになってしまうため、自ら膝立ち(床に膝を付けるが、臀部は浮かせた状態であった。)の状態で謝罪を続けた。当初黒田監督は「お前、もう出て行ってくれ。」等と言っていたものの、Bコーチがスタッフルームで約30分程度繰り返し謝罪を続けたため、黒田監督は「二度とないぞ。」と述べ、Bコーチの謝罪を受け入れた。
その後、Bコーチはベンチ入りを続けていたが、8月31日の浦和レッズ戦で失点したことが原因で、9月以降、ベンチ入りを外され、代わりにHコーチがベンチ入りすることとなった。
その後、Bコーチは、午前中、遠征に同行しない選手らをホームグラウンドで指導し、夕方から遠征先に駆け付けることになった(なお、これがベンチ入りを外れた主な理由であると述べたヒアリング対象者もいたが、当委員会としては、Bコーチがベンチ入りを外されたのは、浦和レッズ戦で失点したことが原因であり、上記理由は付随的な理由に過ぎないと判断した)。
(3) 評価(パワー・ハラスメント該当性)
以上のとおり、黒田監督がBコーチに対し、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」との趣旨の発言を強い口調でした事実(以下「本件発言」という。)、及び、浦和レッズ戦の失点を理由に試合中ベンチに入れない等の処遇をした事実(以下「本件行為」という。)が認められるため、本件発言及び本件行為のパワー・ハラスメント該当性について、上記第5に記載したパワー・ハラスメントの認定基準に則り、以下検討する。
ア 優越的な関係について
監督は、チームとしての戦略や指導方針等を策定した上で、それを各コーチに伝達し、コーチはこれら監督の指示に従って選手らを指導するのであるから、監督がコーチよりも優越的な地位にあることは明らかであり、黒田監督とBコーチとの間には優越的な関係が認められる。
イ 業務上必要かつ相当な範囲であるか否かについて
(ア) コーチの業務について
プロサッカーチームにおけるGKコーチ業務の目的は、チームが試合に勝ち、成績を上げるために、監督の方針に従って、個々のプレー内容を選手に指導することにある。
その意味で、GKコーチは、第一に監督の方針を正しく理解し、第二にかかる監督の方針を個々のプレーに落とし込み、第三にその内容を選手に伝達することが求められるが、さらに、プロである以上、試合に勝つ、失点を最小限に抑えるといった結果が求められる。
(イ) 本件発言について
本件発言は、黒田監督が、セットプレーの練習中に、Bコーチが自分の指示内容を正確な表現で選手に伝達していないと考えたため、なされたものであり、その目的が不当であるとはいえない。
発言内容や表現方法は、「俺が言ったのと全然違うじゃないか。」「俺の言うことを聞けないのか。」と強い口調で言ったというものであり、それよりは、冷静な態度で、黒田監督の考える方針を再度伝えたり、Bコーチが誤っている点を指摘したりすることが望ましかったとはいえるが、一方で、コーチによる指導内容に対する指摘を超えて、コーチ自身の人格否定に至っているという事情はなく、また、発言時間は5分程度であり、業務の遂行に関する必要以上に長時間に亘る厳しい叱責を繰り返し行ったという事情はないから、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。
なお、その後、スタッフルームにおいて、黒田監督がBコーチに対し、「お前出て行ってくれ。」と発言しているが、コーチの業務を全うしなかった者が、スタッフルームまで付いてくることに不快感を感じ、このような発言をすることはやむを得ないものである。当該発言も、人格否定に至っているという事情等はないから、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。なお、その後30分間続けて、「お前出て行ってくれ。」と発言しているものの、それはBコーチが黒田監督の許しを得るまで退室しなかったためであり、Bコーチはいつでも自ら退室してそのような状況から逃れることはできたのであるから、黒田監督の発言が執拗に継続してなされたと評価すべきではない。
(ウ) 本件行為について
本件行為は、浦和レッズ戦で、Bコーチが指導を担当していたセットプレーにおいて失点したことが理由である。
上記のとおり、GKコーチ業務の目的はあくまでチームが試合に勝つために、失点を最小限に抑えることである以上、失点を生じさせたGKコーチに試合の最前線の指導を任せられないと監督が判断した上で別のコーチと変更することは必然である。
また、その方法も、当クラブから直ちに脱退させたり、業務を全く与えなかったりするというものではなく、遠征に同行しない選手らの練習の指導を任せたり、午後の試合の場合には遠征に途中合流させたりするというものであって、社会通念に照らして許容される範囲を超えているとはいえない。
ウ 就業環境が害されるか否かについて
上記の通り、GKコーチの業務は選手への指導を通してチームが試合で勝つために失点を最小限に抑えることを目的としている以上、GKコーチの業務内容が全うされていないときに、監督によって監督の指示に従うように指導されたり、より適切な人員と交替させられたりすることは必然である。
より適切な人員と交替させられ、新たな役割を与えられたならば(本件では、遠征に参加しない選手をホームグラウンドで指導するという役割を与えられている)、再びベンチ入りさせてもらうよう、その役割を全うすべきであって、交替させられたからといって、直ちに看過できない程度の支障が生じ、就業環境が害されるとはいえない。
エ まとめ
以上から、本件発言及び本件行為はパワー・ハラスメントに該当しない。
4 質問事項3について
(1) 本委員会が認定した事実
令和6年12月、黒田監督がミーティングの際にCマネージャー(以下「C氏」という)に対し、「なぜこんなに日程ができていないんだ」などと高圧的に怒鳴りつけ、1時間ほど沈黙が続いた事実は認められない。
他方、C氏が適応障害に陥り、現在休職している事実は認められるが、それが黒田監督からの日常的な圧によるものとは認められない。
なお、2025年4月6日付けでSmartFLASHの上記記事が配信され、その中で「その後監督から、そのスタッフを追及するようなLINEが届いた」と報道されているが、そのような事実は認められない。
(2) 事実認定の補足説明
黒田監督、原FD、D氏、E氏、G氏、F氏、J氏、I氏のヒアリング結果によれば、以下の事実を認めることができる。
原FDは、令和7年1月から当クラブにコーチとして加入する予定だったF氏、J氏及びI氏を当クラブのクラブハウス内の強化部の部屋に招いて、強化部との顔合わせやチームコンセプトの確認を行うこととし、令和6年12月12日午後3時から同部屋にて顔合わせ等のためのミーティングを開催した。当日、同ミーティングには、原FD、黒田監督と、3人の新任コーチであるF氏、J氏、I氏のほか、強化部のD氏、E氏、G氏の3人が参加した。なお、D氏とE氏は、他の業務があったことから強化部の部屋を出たり入ったりしながらミーティングに参加し、I氏は引っ越し先の内見のため20から30分ほど遅れて参加した。
同ミーティングでは、黒田監督からF氏ら3人の新任のコーチに対し、チームコンセプトの説明やビジョンのすり合わせを行ったほか、出席者間で令和7年1月に予定されているキャンプ、その後の開幕戦について協議を行った。
同日午後4時30分頃、キャンプの話になり、黒田監督から、出席者に対し、キャンプの練習試合の対戦相手がまだ決まっていない旨が共有された。その上で、黒田監督は、キャンプの準備を担当していたC氏に最新の準備状況を確認するため、当クラブのクラブハウス内にいたC氏をミーティング中の部屋に呼んだ。
黒田監督が、部屋に入ってきたC氏に対し、キャンプにおける練習試合の対戦相手や日程の準備状況を尋ねたところ、C氏は「すみません、動くのが遅すぎて、まだ対戦相手がすべて決まっていません。」という報告をした。なお、原FD、黒田監督及びG氏は、このミーティングの前から、C氏からキャンプの準備状況の逐一報告を受けており、ミーティングの時点で練習試合の準備が完了していないことを知っていた。
黒田監督は、もともと練習試合の準備が完了していないことを知っていたため、特段怒る様子はなく、C氏に対し、「お前仕事抱え過ぎじゃないか。一人で背負い込むなよ。」と言った。それに対し、C氏は、「いえ、そんなことないです。」と答えた。
原FD、黒田監督、G氏及びC氏以外のミーティング出席者は、12月の時点で1月のキャンプの練習試合の準備が完了していないことに驚いた。特に、その時初めてキャンプの練習試合が組まれていないことを知ったF氏ら新任のコーチは、「今後どのように練習試合を組むようにするのか。」との質問を投げかけた。それに対し、G氏が、「これ入れていかないとまずいですよ。」と発言し、F氏とJ氏も「他のチームに確認します。」と発言し、ミーティング出席者が協力して他のチームの関係者に連絡をとって練習試合の対戦相手を探すことになった。また、G氏は、「今日の夜にJリーグから開幕戦の対戦スケジュールの発表があるので、開幕戦の相手と練習試合を組んでしまっているチームの練習試合がキャンセルになり、練習試合の対戦相手の空きが出るかもしれない。」と発言し、開幕戦発表後に各チームに練習試合を改めて打診する案が出された。
ミーティング参加者が練習試合をどうするか協議している間、黒田監督を始め、ミーティング参加者からC氏に対し批判的な発言をする者はおらず、ましてや黒田監督がC氏を怒鳴りつけて沈黙が1時間続いたということなどなかった(なお、ヒアリング対象者の中に、一人だけ、怒鳴っていた記憶があると供述した者がいたが、他の7名の供述に比べ特に信用すべきであるという事情が認められなかったため、採用しなかった)。
一方、C氏は、ミーティング中、何度かキャンプの準備のために部屋を出て電話をして、電話が終わったらまた戻ってきていた。
そして、C氏がミーティングの部屋に入室してから20から30分後の午後5時頃にミーティングは終了した。
翌13日の深夜、開幕戦の対戦カードがJリーグによって発表されたため、黒田監督は、C氏に対し、「日程出たから、至急動いて!」「早くしないと最悪の結果になる。」とLINEメッセージを送ったが、C氏から返事はなかった(なお、ミーティング後に黒田監督がC氏に送ったLINEメッセージは上記だけであり、黒田監督がC氏の責任を追及するようなLINEメッセージを送った事実は認められない)。
同日C氏は、出勤途中に体調を崩し、適応障害と診断されて入院し、同日から現在まで休職している。
なお、黒田監督がC氏に対して日常的に圧をかけていたという事実については、黒田監督自身が否定しているほか、黒田監督がC氏に対して日常的に圧をかけていたと供述する者はヒアリング対象者の中に一人もおらず、事実として認められない。ヒアリング対象者の供述で一致するのは、C氏は能力が非常に高く優秀なマネージャーであったが、その反面、他人に仕事を任せることができず、すべて一人で抱え込む傾向があったため、それが積もり積もって適応障害になってしまったのではないかとのことであった。
以上の事実からすると、C氏は令和6年12月13日から現在に至るまで適応障害で休職しているが、それが黒田監督からの日常的な圧によるものとは認められない。
5 質問事項4について
(1) 当委員会が認定した事実
令和6年1月25日(以下、5項においては「令和6年」という表記を省略する。)から2月1日までに実施された沖縄うるま市キャンプにおいて、黒田監督がインフルエンザに罹患したこと、及び、黒田監督が1月29日にチームのスタッフら2名とともに会食に出かけたことは認められるが、隔離期間は1月28日までであり、1月29日に行われた会食は隔離期間満了後であるから、黒田監督が一般的な隔離期間・チームの規約に反してスタッフらとともに会食に出かけたという事実は認められない。
(2) 事実認定の補足説明
原FD、黒田監督、P氏(以下「チームドクター」という。)のヒアリング結果によれば、以下の事実を認めることができ、これに反する証拠はない
当クラブは、1月14日に三輪緑山ベースにおいて、1月19日から1月24日にかけて沖縄県名護市において、1月25日から2月1日にかけて沖縄県うるま市において、2月2日から2月10日にかけて宮崎県綾町において、それぞれキャンプを行った。当該キャンプは、キャンプ後に控えている開幕戦に向けた準備という意味合いに加え、その年のチームメンバーが数週間に亘って寝食をともにするという重要な意味がある。なお、同年のキャンプにおいては、例年、前半2週間程度は基礎的なトレーニングを実施し、後半1週間程度はJ1リーグに所属する他チーム同士と練習試合をするというスケジュールが組まれていた。
黒田監督は、上記うるま市におけるキャンプ中、1月23日頃から胃腸の不調を感じ、さらに、翌24日に発熱(37.2度程度)や下痢を発症した。
黒田監督は、1月24日に、強化部のスタッフを通してチームドクター(キャンプには同行していない。)に対して、どのように対応すべきかを確認したところ、医療機関を受診するように指示された。
そこで、黒田監督が、翌25日、近隣の病院を受診したところ、インフルエンザと診断された。なお、受診当時、既に熱や下痢の症状は治まっていた。
その後、黒田監督がチームドクターに隔離期間について問い合わせると、チームドクターは、学校保健安全法及び学校保健安全法施行規則に基づき、①黒田監督が胃腸の不調を感じていた1月23日が発症日であると考えられるから、1月24日を1日目として5日が経過する1月28日までが隔離期間である、②ただし、発熱が続いている場合には、解熱した後2日が経過する必要がある、と隔離期間について説明した上で、隔離期間中は、屋内で選手やスタッフと接触することは避け、屋外でも選手やスタッフの風下にいるようにと指示した。
黒田監督は、1月26日から1月29日まで、上記チームドクターの指示に従い、屋内で選手やスタッフを接触することはなく、また、屋外では、選手やスタッフらの風下に位置する場所から試合を観戦し、選手の指導をしていた。その間、黒田監督が発熱等の体調不良を訴えることはなかった。
黒田監督は、1月29日、うるま市でのキャンプが終盤に差し掛かっていることから、強化部のスタッフらとキャンプ後半の方針や開幕戦の準備に向けた打合せをすることになった。当時、黒田監督は、既にインフルエンザの自覚症状はなかったものの、念のため強化部のスタッフを通してチームドクターに打合せへの参加の可否を尋ねたところ、チームドクターから屋内でスタッフらと食事をしても問題ないとの回答を得たため、同日夜、食事を兼ねて上記内容の打合せを実施した。この打合せに参加したのは、黒田監督、原FD及び強化部のR氏3名であった。
第8 結論
以上のとおり、本質問状に記載されている事実はほとんどが認められず、一部認められる事実についても、パワー・ハラスメントには該当しない。
以上